七色のとら 作
あかい皮を剥かないまま、
熟した実は 歯を立てなくても。
よおく冷やしておいたから
滴る雫は とても 冷たい
ああ もうなつねぇ。
日が長くなったと思ったら
いきなり夜が来る。
種の周りはすっぱいから、
本当は最後にしたくはなかったけど、
あぁそのせいで いつまでも、いつまでも口の中に残る
ほとんどの甘さよりも
忘れられない一瞬がわたしを掠める
『すもも』
七色のとら 作
紙一重です。これって言葉にできない。
昔は、なりたい自分になる術(すべ
をちゃんと知っていた。
ルパン三世が好きな男のタイプだったんだ。
(今もだけど。)
毎日 何一つ決まってなくって
そんでそれが許されてて、
気まぐれで、いたずらで、風船みたいな若さ。
今日はピンクででもそれは明日にはブルーに変わってしまうかもしれないの。
それがわたしと思っていたし、決まってる人間なんてつまんないからなりたくないって。
実は今も思ってるけど、わたしは向上することに決めたから、ある日 その日暮らしにさよならした。
それっていつのことだっけ。
そんで根っこを張って上を目指すって決めたのは
実はほんのつい最近のことなんだよね。
「一分間に感じる一時間」を沢山繰り返していると 早く歳をとる。
「一時間に感じる一分間」をできるだけ繰り返して、
人生に練習などなくて
言ってしまえば練習と思ってるときすら本番で、
できるだけ呼吸を深く吸って 今ここにいるんだって
自分自身に言い聞かせる、そんな毎日。
『いつから?』
七色のとら 作
ぽろぽろと生まれてくるものがある。
思い通りになることばかりと思ったなら、 死ぬまで手加減して、片眼をつぶって歩いてれば?
世界を全て知ってから生まれてくるのはつまらなすぎるとは思わない?
今日もまた、昨日より大きな怪物がわたしを呑み込もうとやって来る。
あしたもそうだろう。
けどわたしが怪物になることは、死ぬまでない。
わからないまま生きていくからぽろぽろと生まれてくるものがある
悟るには早すぎる。
世界中のなぞを死ぬまでに全て解いてしまうことはできないんだなぁ。
とてもくやしい
歩きながら
走りながら
なにかに心奪われながら
間違えながら
笑いながら
歌いながら
誰かがやってるからってやらない理由にはならない。
汚れたら洗い
何度でも新しく生まれ変わり
苦しい時ならなおさら誰かに与えてあげよう
あたしにあるもの全てで。
、ながら刻んでいこう
、ながら進んでいこう
やっとと思ってもまたすり抜けてゆく
この隙間を縫い、もっと隙間を細かくしても
またこの手に入る瞬間にさらにまた、もっと細かかったことに気づく。
いつまでも手に入れてしまうことはできないから、 安心して力いっぱい追いかけてもいい。
ひとつには、なれないのだろうか。
『ながら生きていく』
七色のとら 作
悲鳴悲鳴。聞こえてくるけど痛みなんて分からないから。
空っぽになってみる、わたしは平気。
まだ間に合う。まだ間に合う。
ケースなんてどうでもいい。
百円均一で売ってたやつで十分なの。
わたしは初めから目隠ししてる。
指で手のひらであなたに触れる。
本物だと信じてるから別に何も怖くない。
眼は、頭についているただの情報収集する機械。
だからだれにも騙されたりしない。
感覚のままだったから。
本当は暴いて欲しい。
『ピント』
七色のとら 作
ふと気がつくと、時々ものすごく冷静な自分が上から見下ろしている
そしてくすりとも笑わずにただ淡々と実況中継をしています。
面白くなさそーうに、例えばものすごく頑張ってる自分のからまわりっぷりなんかを 静かに実況中継。
宵の雨垂れのおとみたいに スローモーションで
リアルじゃないというより、好きな色のフィルターを通してじっくりと冷静に観察している。
もしかしたらそっちが本物なんじゃないかとも思うくらい。
そして、あぁ本体は空っぽだったわ、と気がついて、
すっと吸い込み我に返る、am7:24分。
この時計、いつも五分だけ周りより早いんだわ
『スローモーションからシグナル。』
七色のとら 作
君がうたうと なんか変な感じ
聴いているとお腹がすいてくるから。
いつも満たされすぎていて感覚が麻痺しちゃってる
そんなわたしにとっては一番必要なうた。
見せ掛けを取り除き
最後に、本当に必要なものだけを残す
裸んぼになれるさ
君のうたは剥き出しにするうた。
言葉を忘れ
表情を忘れ
光は遠退き
おかぁさんのお腹の中に帰っていくみたい
『涙の海で生まれた』
きっとしょっぱいから
それは本当かもしれない。
『君の うたう うた』